ペニンシュラ型

~私とあなたの不可避な壁~

説明なんかなしで良かったです 『京騒戯画』5話


巷での評判も素晴らしく良いみたいで自分も楽しめて非常に満足している5話でございます。
サブタイの『若き三男の悩みと始まりと終わり』が本当に今回の内容を表してるのが良いですね。薬師丸でなく彼の家族としての、明恵としての始まりと終わりについて。
公式サイトやニコニコ動画配信ページでの、普段はちょっと説明しすぎじゃないかというあらすじも端的で非常に良い。
八瀬の台詞にもありましたが、子供たち三人はそれぞれ両親の帰還を待っているのだけれどその動機が違う、そして明恵の動機とは…という回でございました。


今回は本当に画面作りが冴えまくってますね。
個人としてのアイデンティティの授受をDNAで表すのはとても現代的と言えるし、さらにそれを数珠に見たて、また「家族」としてのつながりの理由とするのもしびれます。
ちょっと考えすぎかとも思うのですが、この「明恵上人」の受け渡しをしてるのは左腕なのですけど、一方でイメージシーン?前にも書いたようにバラバラになった家族を意味する割れた石榴を持っているのは右腕なんですね。
明恵上人」ではなく彼自身が割れた石榴を持っていてコトがその左腕をはたきおとし、一緒にザクロを食べる。『回るピングドラム』の「運命の果実を一緒に食べよう」というシーンを思い出した人も多かった様です。


食べる、というか飲食に関して今回の話では契約、願いとものを食べることがセットになっていますね。
自分の望みを叶えられない明恵は飲みたくないジンギスカンオレを飲む羽目になり、明恵にとって芽がないコトの女の子を外に連れて行ってあげるという話、そして未だ果たされない父との約束はその様な食べ物の受け渡しがされてない。
一方で嫌々ながらも笑彼女さんからのチョコを受け取ったコトは、明恵を助けてほしいという彼女の望みを叶えてあげるのでしょうし、母親を探すという点で同意するからこそ割れた石榴をコトは食べるのでしょう。
そういった関係が出来ているから、肉とかコトの食べたいものを作ろうと彼女さんはしてくれますし、仲直りはしたけれどまだ「腑に落ちてない」明恵は食事を作ってあげようとするけど、それはコトの食べたいものと噛み合わない。
ジュースの売り切れに文句を言うコトも含めてこの辺りは本当に面白いと思います。


ちょいちょいある明恵目線での画面も良いですね。最初に阿吽の方にカメラを向けて頭を落とすカットを入れて、これは明恵の見てる画面だよというのを示しておいて、つい怒ってしまって目を泳がせるカットを入れる。顔を描かずに気持ちを表す上手い方法だと思います。
すすき野原のシーンもそうで、約束についても家族についても先に行くコトを後ろから嫌々ながらちょっと距離をとって追いかける?ついていく?訳ですが、ここでアニメならではの嘘というか「始まりと終わり」を連れてきたという事実が腑に落ちた彼が一瞬で音もなくその距離を詰めてコトを捕まえる。すごく印象的です。
ついでに言うとそれまでずっと、画面に対して駅開きの電車とは反対方向へ進んでいた向いていた明恵が最後の台詞を言うにあたって電車が進んだ方向を向く。
位置関係で似たようなことを言うと、このすすき野原のシーンにおいて明恵は基本的に中央からやや右気味に顔が描かれることが多かったのに対して、最後の台詞でもっとも左によった位置に立ち、語気を強める、視聴者への印象を強めるというのは地味ながら効果的ですね。
直前の家族についての思いを語るにあたって一歩前へ(つまり左へ)踏み出すコトもこの前後では画面の右側にいます。この位置関係の微妙な変化も面白いです。


さぁ彼はあるべき様にふるまえているのかふるまうべきなのか、分からなくなって参りました。予習編でも既に示されたように、古都の帰還に向けて、そしてそれを受けて話が動いて参ります。
お話は折り返し、続きが楽しみだけどちょっと落ち着いて次回は実写のロケ地訪問?みたいですが、更新するかな悩み中。