ペニンシュラ型

~私とあなたの不可避な壁~

いきなり急展開だけど遂にここまで来たよ、おぉ麗しの都よ母が帰ってきた 『京騒戯画』6話


今回で遂に予習というか、これまでの既存展開で示されていた内容に追いつきました。
楽しみにしていた第6話『二人が計画し一人が悩む話』でございます。
ある意味、京騒戯画はここから始まったともいうべき節目のストーリーをやりながら、逆にその始点とは違った要素があって盛りだくさんの回でした。
それに合わせてOPなども微妙な変更点が。これからまさにお話が動きだすということで期待を煽ります。


逆に0話の時とは意外と色んなところの設定が変わっていることがはっきりしましたね。
この二人の計画の時点で既にコトと3人が自分たちが兄弟であることをほぼ確信しているというのが一番大きい変更でしょうか。
おかげでコトの気持ちは分かる、という台詞のニュアンスがかなり変わっていますね。さらには本人は意識してないでしょうが伏見の「派手な兄弟げんか」の意味にコトも加わっていることになるとは。
そのために稲荷の暗躍?や女の人にキスされたなどがカットされたのもちょっと残念ですが、稲荷についてはついでに帰ってくるときに何か説明がもしかしたらあるかもしれませんね。


前半では前回の回想に補足する形で明恵、というか薬師丸についての紆余曲折についての説明が入りました。
心臓として石榴を描いて口にさせる、というのは面白いですね。石榴の半分を明恵が持っているのも気になります。コトのザクロを食べるイメージシーン、先生が若返っていることとも関わりがありそうです。
あの石榴の絵自体が明恵の血で書かれたものですし、ピングドラムのごとく「運命という名の果実」を分け与えたのかもしれませんね。ザクロ(命)の残りをコトに分け与えたがために先生が若返っているとも考えられますし、創造主の命が削られているから鏡都の崩壊が近づいているという見方もできるかもしれません。彼の血で描かれた心臓を持つが故に他の二人ではなく、薬師丸が「明恵」を継ぐことが出来たというのもあるでしょう。
絵を本物にする(命を与える)のに明恵の記名が必要というのは個人的に自分の大好きな「亡念のザムド」を思い出しました。
有名なハデスとペルセポネのザクロの逸話がありますがイザナギイザナミ神話と同類系の死後の世界の食物を口にすると死後の世界の住人となってしまうというものの一つですね。この様に扱われる石榴を逆に生き返らせるために使うというのは面白いと思います。古都への「それは生者のためのものではない」という台詞もこの石榴の逸話を意識したものであると思いますが、そうなってくると薬師丸はどちらの世界の住人なのでしょう。
人かそうでないかという風に問われると自信で言っていたように化け物のカテゴリに入ってしまうかと思いますが、そうなると八瀬の「人間風情が」も気になりますね、この辺りの紆余曲折を後から来た兄と姉は知っているのでしょうか。知らないのならそれが故の薬師丸の葛藤もあったのでしょう。


今回の演出面の白眉といえば、台詞なしで描かれる薬師丸と明恵、古都の関わりでしょうか。しれっと場所が鏡都に変わりつつ、絵と距離感だけで薬師丸が二人に打ち解けていく様子が描かれるのも見事ですが、ここで注目すべきは位置関係ですね。
最初孤立している薬師丸が左側にいて、場面展開もあってずっとそういうわけではありませんが、基本的に右側に寄っていき、打ち解け、兄弟も増え家族になっていくのですが、最終的に明恵と古都が今度は左側に行ってしまい、関係が断絶する。
ここは見事です。餌付けとか洗脳というコメントも見かけましたが、変わっているのは薬師丸だけではないんですね。実は石田明恵も変化していっている。
1話にてギャグ描写とはいえ仏に「あの明恵」とまで言われており、今回の描写で視聴者から見ても明らかに尋常ではないというのがはっきり分かる彼も、古都がいた右側に対して左側に元々は立っているんですね。或は変化が始まっていたからこそ、異常に思える「拾ってくる」行為が出来るようになっていたのかもしれません。
無造作にまさに土足で薬師丸の血を踏みつけていた明恵が父親としての自覚を持ち、実は薬師丸より先に彼が近寄ろうとしている右側の存在になっている。この辺りはまさに薬師丸に彼が「息子」の役割を与えたように、自身が「父親」としての役割を持ったが故でしょう。「あるべきようわ」が実践された一例ともいえるでしょう。
この親子の役割を演じている内に本当に父子の関係になっていくというのは松本理恵監督の前作「映画ハートキャッチプリキュア!花の都でファッションショー・・・ですか!?」の男爵とオリヴィエ(ルーガルー)と同じテーマですね。『「家族」の誕生と再生』という点では共通したものをもっているというか松本監督はこういったテーマが好きなのでしょうか。
そういえば男爵とオリヴィエの関係が構築されていくシーンも台詞なしでの描写でしたね。あの辺りや「だいてんしみかえるさま〜」から始まる出会いのシーンが私はとても好きです。


閑話休題


これに対してコトと明恵の位置関係は巧みに左右が入れ替わっています。明恵のお願いを受諾するかなども絡んできますが、どちらかというと兄弟かもしれない彼女との距離感を測り兼ねている明恵の心象を表している様にも思えます。
しかし、古都の絵を見たコトの嬉しそうな感じが良いですね。先生に語った「ママが綺麗だと良いな」という希望が叶った(後から事実が変わったわけでないのでちょっと変な言い方ですが)のですから。
にしては父親に対する子供たちの反応の薄さよ。次回サブタイだってついで扱いですからね。
ついでの父親も含めつつ、両親がそろい、EDの入りも完璧で次回に参ります。
さぁなぜこの家族が一緒にいることは出来ぬのか。そろそろ終盤でございます。たのしみ