ペニンシュラ型

~私とあなたの不可避な壁~

もっと評価されるべき作品だとおもうますです、はい。





エロティクスエフで連載されてる短編連作『回遊の森』がとっても良くて、気になってた灰原薬先生。
多分今のところ、灰原先生オリジナルの作品はこの『とかげ』だけしか出てないんじゃないかと思うんだけど、なかなか手に入れられなくて読めなかった。
このあいだやっと見つけて読んだんだけど、期待通りに面白かったです。
全三巻で短くまとまってるし、かといって急に話をまとめた感じでもなく、読みやすいお話になってると思う。絵も綺麗で素敵だから、全部で三冊だし試しに読んでみれば良いんじゃないかな。


表紙だけ見てもお話は全然分かんないと思う。むしろ、表紙買いで勝手に話を想像してから読んじゃうと低い評価を受けてしまいそうな気がする。
表紙のねえちゃんが要するに“とかげ”って名前のキャラクターなんだけど、とかげは不老不死の力を持ってる。とはいえ、よくある不老不死キャラと違ってとかげの場合は死を経験することが出来る。
正確にいえば、普段とかげの精神は別人の体(死体)に宿っているのだけど、その体が死にいたるような傷を受けた場合には、前の体からまた別の体に宿り直さなければいけないというシステム。
とはいえ、作中体を乗り換えるシーンは冒頭で表紙に載っているねえちゃんに宿るのが描かれるだけなんですが。
でも、ここが肝。とかげは男。なので、この作品は一種のトランスセクシャルものとも言えようか。ゼロサム掲載作らしいといえばらしいのかな?
そこで、この体の元々の持ち主だった夕佳(事故で死亡)を好きだった男の子忍武(しのぶ)が絡んでくるわけでフガフガ。
そりゃ好きだった近所のお姉ちゃんが事故で急死したと思ったら、突然生き返り、かと思ったら中身は男って驚かない方がおかしい。
そんな所に超常現象処理班みたいなのがとかげの気配を追いかけてやってくる、と。
あらすじはこんなところでいいかな?


設定上、バトルものみたいな雰囲気ですが、バトルは控えめで精神面の描写が中心。
夕佳の体はそこにいるのに中身はとかげである、ということに対する忍武の複雑な思いとか、自らの運命を呪い死を望むとかげの心中とかね。
各キャラクターも性格や行動原理が分かりやすくできていて、心情面を丁寧に描くことを助けている印象。
更に女の子が可愛いから(とかげにいたっては中身男なのに)目にやさしい!!ちとせちゃんとか1エピソードしか出ないのがもったいない!!
あと栗山さんヘタレ眼鏡!!メガネで黒服なのに仕事できない!!ふしぎ!!妹はかわいい!!


ちょっと綺麗にまとまりすぎててて物足りなさを感じるけども、この設定で重要になる部分をしっかりきっちりおさえてて本当に良く出来ている作品だと思う。
これは本当に戦国バサラコミカライズ版にも手を出してしまうやもしれぬ。
灰原薬先生、今後見逃せない作家さんの一人です。