ペニンシュラ型

~私とあなたの不可避な壁~

瞬きするたびに真実は形を変える 劇場版UN-GO episode:0 因果論 感想

というわけで見に行きました。ノイタミナ枠で放送中、みんなだいすきボンズ最新作『UN-GO』の劇場版。
あーもうなんでボンズ作品は私の業に関わるようなところをくすぐるのかしら。アニメ見てるっちゅうのに現実をブン投げてくるし、こっちにも、自分のそれを梱包して形にしてから別のところにブン投げることを要求してくるという感じですよ。
一応、お話の内容とか細かいところについてのネタバレに関しては続きを読む以降に格納してあるはずです。
追記:って思ったら個別リンクで飛んできたら続きを読むも何もないや。赤字以降ネタバレということでお願いしますです。


というわけで、すごく面白かったです。そりゃぁ公開初日に見に行ってやるぜ、コノヤロウというあらかじめ作品に対してある程度好意的な印象を持っている人間の感想なのでそうなりやすいのかもしれませんが、逆を言えばテレビ放送されている内容をある程度おもしろいなーと思えてる人は満足できるのではないでしょうか。
しかし、個人的には非常に面白いのと同時にすごく、すごく憎たらしいです。これは作品中に使われたある曲についてで、自分の思い入れというか私怨にもほどがあるのですが、詳しくは後述。


45分という短い尺の作品ということはあらかじめ知っていたので、劇場作品として大丈夫なのかなー、終わってから短いなー映画館来なくてもよかったかもなーなどということを思わないかと見に行く前は少し不安でしたが、まったくの杞憂でした。よくよく考えたら普段のテレビ放送からして20分ちょっとの尺でこれでもか、という情報量を詰め込んで(基本的に)一話完結の探偵ものをやっているわけですから、その約二倍も時間があると考えれば充分なんですよね。
ちょっと本題からそれますけど、最近こういった形の映画作品が増えていますがビジネス的なことやメディア産業的なことはおいておいて、こういう自分が良いと思った作品に対して直接お金が使いやすい様な商業形態はありがたいと思います。*1



お話自体もエピソードゼロということで新十郎と因果の出会いや因縁を描いてるわけですが、単純にはじまりの物語を示すだけでなくきっかけとなる彼らの出会いと敗戦探偵最初の事件の二つを軸に、時間関係を巧く前後させながらすすめています。
後者のオチのつけ方がちょっと拍子抜けしたというかありきたりだったのが少し残念でしたが、細かいところでの叙述的な伏線やテレビシリーズからのネタの料理の仕方が丁寧なのでUN-GOという作品としての良いところをだせているのではないかと。
ただ因果との出会いなどといった部分をクローズアップするため、今回は話の成分として因果の力などのようなファンタジー要素が強くなっていますそういった部分が苦手な方(五話までの放送を追っていればそのあたりへの抵抗はかなり軽減されているのではないかとも思いますが)もいるかと思いますが、劇中出てくるテーマはいつもの會川水島節なのでご心配なく。たとえばテレビシリーズで既に描かれているような「誇り高き死者」とか「敵」とかいったテーマも扱われます。
キャラクター的なことを言いますと即ヒゲ剃り出す新十郎マジちょろい、とかまだ距離測りかねてる泉ちゃんかわいいなどといった見どころもありますよ。



というわけでテレビシリーズを楽しんで見られている方にはぜひ因果論、見に行ってほしいと思うのですが、他にも見に行ってほしいという層がというのがあるんですね。これが最初に書いた、すごく憎たらしく感じたという気持ちの原因なのですが、それがどういうものなのかということを記述してしまうと、たぶん私が最初に感じたこの憎たらしさというか、ずるさというものを感じてもらえなくなるような気がするので書けません。
ただ、あのシーン、○○(ネタバレのため伏字)しだした瞬間から嫌な予感がしました。三つ目で案の定やられました。まさに私たちの知る因果が登場する直前の時系列のシーンでやられました。そうでした、これテレビで既に「ブルーライト・ヨコハマ」作中で流してる作品でした、コノヤロウ。あーくやしい


奇しくもトヨタが30歳ののび太とかいってCMを始めたこのタイミングで、あの曲をあの使い方ですからね!!使い方としたらトヨタなんかよりよっぽど意味にそってる(方向性はともかくとして)使い方ですよ!!はらがたつ!!こちとらすこしふしぎで育ってきとるんですよ!!*2
なんというのでしょう、あくまで私個人のあの曲に関する感想ですが、上等な料理に蜂蜜をぶちまけるがごとき行為を目の前でやらかしくさっておるのですが、でもそのぶちまけ方が最高級のテクニックで以て行われていて、悔しいかな、その持ってこられたものをわたし完食しとる!!美味かった!!という感じですよ、ちくしょう
この悔しさを分かる方にぜひ見ていただいてこの感情を語る機会を持ちたいのでぜひ色んな方に見ていただきたいと思います。



公開期間は二週間だけ!!一律1200円!!ぜひ!!
誰か一緒に愚痴ってください!!


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エンディング曲気にいったのでCD買いに行こうと思います。
ここから下はネタバレだよ





というわけでここからネタバレです。





はい、というわけで私がグチグチ言ってる理由ですが武田鉄矢の『少年期』が劇中で歌われます。そうです『ドラえもんのびたの宇宙小戦争』と書いてリトルスターウォーズのエンディング曲ですよ!!
歌うのはテレビのエンディングとかにもちらっと映ったりしてるヒロイン(え、因果がヒロインだろ、ですって?まぁ劇場に行きなさい)なわけですが、テレビ版には出てきてないということは、そうですね、わかりますね。
そして彼女が「ぼくはどうして大人になるんだろう」を大人になることを拒否しながら歌うわけですよ!!主人公に半分自嘲気味の説教をされた後に!!そして!自ら死を選びながら!!「いつごろ大人になるんだろう」
作中でいう“大人になる”というのは自分の中の(自分すら意識していないかもしれない)真実を吐き出すということですからね!!
そもそも最初にこの曲歌われるシチュエーションが戦地で歌を歌うNPOが歌う一曲ですからね!!夢からさめるまでもなく飛べないだろうが、と!!
誰かこの感情に同意して下さい!!承認欲求!!



今回の映画のみならず『UN-GO』作中全体を通してのテーマの一つとして「真実」というのがあると思います。映画のポスターにはそのまんま「求めたのは真実」と書いてありますからね。
因果の力が拒否不可能な質問を押しつける=真実を吐き出させるものだとしたら、今回因果のライバルとなる(そしておそらくこの先テレビシリーズでも登場するでしょう)別天王*3は言の葉を真実にしてしまう力を持っています。
押しつけられた認識判断による“真実”を超自然的な力によって上書きする、という荒技を新十郎を行うわけですが、そこで重要になるのが「何が真実なのか勝手に決められたくない」という直後に少年期を口ずさむ口から出る台詞なんです。
この方法によって一度は別天王を退けるものの、そのおかげで「新十郎」は真実を手にすることがなくまた真実を生きれなくなるというオマケつきです。まさに敗戦探偵。
一方で真犯人の言葉によってああいう結末が訪れたことの理由には、周りの認識がどうであれ彼の認識においては、真犯人が誰かという厳然たる真実があったからだと思います。
ここでひとつ、真実を虚偽で塗り替えることは出来るけれど、真実で以て上書きすることは出来ないということが示されました。これは既にテレビシリーズでも因果の力による告白で新十郎の推理が覆されるといった展開が示されていますが、それ自体が「真実が決められている」という風に解釈することも出来るのではないかと思います。真実はいつも一つなんかじゃないんだよ。


今後のテレビシリーズにおいても新十郎が敗戦探偵であるかぎり、真実が虚偽のものに書きかえられてしまうのかもしれませんが、作品のテーマとしては、その元となる真実さえも何者かによって決められてしまっているものではないかという風になっていくのではないかと期待します。
うん、やっぱりボンズ作品。


*1:というわけでお金落とすので風守ぬいぐるみとかマスコット出してください!!

*2:え、ネタバレ防止になってない?ちっとだけバレ分かってる方がおもしろい時もあるっておら何かで読んだだ。

*3:読み:べってんのう 最初このエントリ書いた時は別天皇と記載していましたが、コメントで指摘いただいたので修正しました。