ペニンシュラ型

~私とあなたの不可避な壁~

亡念のザムド各話を勝手に解説していくシリーズ 第22話

配信にて全話視聴済みのrivfiがネタバレにならない程度に、テレビ放映された回の分かりにくいところ、今後に備えてちょっと大事なところなどを書いていくコーナーです。あくまで私の勝手な解釈なので間違ってたらごめんなさい。

絶賛放置中のわがダイアリですが、東京MXで25話が放送される前には追い付きます。これ以上やるやる詐欺してたらこれ書く意味ない。
ただ、今日の関西圏での放送には間に合わないです、すいません。25話は絶対に見ましょう。
2話みたいなアクションを期待してたのに全然なかったじゃねぇかこのやろう、とか思ってる人も絶対に見ましょう。
さてやるか。


〜色々と解説〜

  1.ミドリの姿を見ればサンノオバも喜んでくれるはず、などと汗馬が言ってたのは何故?
後述するザムドの負うべき役割をミドリにやらせようとしていた(もしくは結果的にそうなる)からですね。
一応、南政府側についている汗馬がサンノオバのためになるようなことをするっていうのがちと分かりにくいんですが、こういう所属している集団と個人の目的が異なるっていうのはこの後も頻出するので注意してください。


  2.垣巣は結局今回なにがやりたかったor言いたかったのでしょうか
その前におさらいとして、バラドール戦役にて垣巣がリュウゾウによって命を助けられていることとバラドール戦役時代は尖端島は北政府の管轄内にあったみたいであることをおさえておきましょう。
後者はやや分かりにくいですが、リュウゾウが当時ヒトガタ研究に関係があったこと、尖端島民の血が流れているだけで垣巣が二等市民であったということ、須磨子さんが現在、北領内にいることなどから推測できますね。
それで、彼が今回リュウゾウにどうしてほしかったかというと、楽にして欲しかった、ということでいいと思います。
後半の須磨子さんと彼が再会しているかのような場面で垣巣は「お母様の島(当然、尖端島)を取り戻したかった」と言っています。要するに尖端島を須磨子さんがいた当時のように戻してやりたかった、というわけですね。
ところで、序盤では何度か垣巣が南政府の会議のような場所に出席し、成果を出すようにとせかされる場面がありますね。成果を出さなければ、今のポストから降ろされるというような言葉もありました。ところがある時期を境に、その南政府の会議の場面はまったく出てこなくなります。これは垣巣が成果を出し始めた、すなわち汗馬の力を借りてヒトガタ実験に手を貸し始めた、ということでしょう。
最初の頃の垣巣は設楽さんの一件でもあったようにヒトガタ実験に積極的ではありませんでした。だからこそ、自分と同様にヒトガタやザムドに対して思うところのあったハルに興味を示していたわけですが、尖端島を母がいた頃のように治めるためには軍人として自らの仕事を全うせねばなりませんでした。ここにおいて垣巣にはかなりの葛藤があったでしょう。
そして、とうとう緑心石の力を使い、ミドリを犠牲にしてヒトガタ実験はひとまず完成を得ました。軍人の仕事としては一段落がついたことになります。
ここで垣巣はリュウゾウに対して思うところがあるわけですね、ヒトガタ実験に手を染めざるを得なかった自分に対して、ヒトガタ実験に関わったにも関わらず人を信じ、また敵であった自分の命を救った彼に対して。
何度か書いていますが垣巣凍二郎というキャラクターは非常にまっすぐな部分を持っています。だからこそ、自分が為してしまったことに対して罪悪感を感じるし、その痛みを解放してくれる出口を探した。
だからこそ、不必要なまでにリュウゾウにケンカを売る様な発言をするし、リュウゾウの「中佐としてのお前をここで殺す」になるわけですね。


  3.須磨子さんと垣巣の会話の場面は一体何でしょう?
こればっかりは回答が全く示されていません。本当にあったことなのか、今わの際に垣巣が見た幻想なのか。
ただ、声に全体的にエコーがかかっている*1ことや知るはずの無い現在の須磨子さんの様子が現れていることから、須磨子さんのタマヨビの力がなんらかの形で作用した結果による精神世界かなにかで実際に二人の間にあったやり取りではないか、と個人的には考えたいです。


  4.アキユキ達が絶望していましたが、結局大巡礼ってなにすることなのよさ?
まずは、柿原ボイスの白髪の台詞を引用しましょう。『定めの時、胎動の扉を開いてヒルコを天へと導きルイコンの流れに返す』、またザムドが正式名称ザムンドヒュンデ*2 *3であり導き手という意味を持っていることが明かされてますね。
ヒルコを導いて、その力でおおいなる闇を無に帰す、これが大巡礼であり、この世界の仕組みの様です。これをやらないと世界が闇に包まれてしまう。どうやらここでいう闇とは人々の心のネガな部分なども含まれている様子。
さて、ここで問題。ザムドが導くべきヒルコとは一体なんぞや?
そう、さんざん出てきましたが人間というか生き物の魂ですね。ではどうやってそのヒルコを取り出すか。答えは簡単、ヨホロギという殉教者が自死、もしくはザムド自体が殺してしまえばいいんです。次回、23話でも魂の間引きという表現が出てきますね。
というかそのまま「ツマカテ」こと「慎ましき糧より豊かな生を」になっちゃってるわけなんですね。
せっかくアキユキ達は苦労して胎動窟にたどり着いたというのに、世界の真実がそんなものならそりゃ絶望もするわ、というわけです。
ちなみに「ザムドなのに我を忘れていないんだ」という白髪の発言はおそらく、アマウでの仮面をかぶった状態のことを指してるのではなく、ザムドの役割を為さねばならないのにアキユキが自分の感情を持っていることを言っているのでしょう。


長くなりましたけど、これを理解していただければ、或る程度話の理解が進むのではないでしょうか。


〜チェックポイント〜

  1.亡念のザムドという作品らしさ
初っ端の伊舟の「女の作った飯が巧いといえる間は生きていける」というのは再度見返してみるとそのままリュウゾウにかかっていることが分かります。これはザムド各話に散らばっている見直せば分かる前フリの一環ですね。
また、唐突にチラッとだけ出てきてこの先も全く語られないスカッキのバックボーンである(あとは視聴者が想像しろ、考えろという姿勢)とか、目的のために少数の犠牲を払う、ということに対して既にそれを行ってしまった垣巣、それを今後行うしかないアキユキ、少しの犠牲さえなくしたいと考えるリュウゾウの対比など、この話は非常にザムドらしい話の作り方をしていると思います。
この話を(言ってる内容はよくわからなくても)面白く感じるか、つまらなく感じるかで亡念のザムドという作品全体をどう思うかが分かってしまうのではないか、などと思いますね。


  2.食事とか物の授受とか
何度も何度もいっておりますが、この作品では物の受け渡しはコミュニケーションの暗喩だと私は信じて疑わないわけです。
そういった観点でいうと、一度はフサが作った弁当を食べようとした垣巣というのは非常に面白い見方が出来るんじゃないかな、と思います。たとえば、今回の独房でのジンイチロウと司令官のシーンであるとか初期のザンバニ号での食事のシーンから、食事というのは仲間とか家族の象徴にもなっているわけですからね。
また「忘れ物だ」と言って散々登場していたミカンを最後に垣巣に投げたのはどういうことかと考えるのも非常に楽しい。忘れものであるミカンは一体何の寓意であるのか!?


  3.視聴者が読める展開
今回のラストは特にこれを意識して作っていることがよく分かる回でした。
元々、Cパートがエンディングテーマ後に出る回が突発的にある回とか、時間が迫ってきたところで一応話にキリをつけておき視聴者に終わりか、と思わせておいてもう1シーン入る(12話が分かりやすい)とか或る程度アニメを見慣れている人に向けて作ってるようなことがこの作品ではよくある様な気がします。
そりゃもう、あんなフサさんのモノローグを入れたらリュウゾウが「美味い」っていうのは確定事項じゃないですか!!
あれで視聴者はリュウゾウの台詞を期待するわけですよ。案の定、リュウゾウが一人弁当を食べるシーンが出てくる。だけど言わない。まだ言わない。画面暗くなった。え、言わないの言わないの?というドキドキが出てくるわけです。
あのEDテーマのギリギリ何フレームか前の「……美味ぇ」のケレン味たっぷりさ。言うのを分かっているからこそ楽しめる。



あとは公式にハルにタマヨビの力があると言及されたことであるとか、ハルはその力で多分死にゆく赤ん坊の声が聞こえてるよね、とかサンノオバがセイタカっていう子に言う「水門を閉じて〜」っていうのを聞いた時ナウシカを思い出した、とか色々ありますがこんな感じで。
次回はエウレカセブンでもレントンエウレカがケンカした回を書いた大野木さんの脚本ですよ。


21話分はこちらで↓

どうにか追いついてほしい23話分はこちら↓

*1:須磨子さんも持っているタマヨビの力で聞こえる声は基本的に作中エコーがかかって聞こえる

*2:どう聞いてもこう言ってるんだけど何故か公式サイトの用語集だとザムドヒュンデになってる。あの用語集は実は外部のライターさんが書いたものなので(しかもはてダ書いてたw)微妙に異なる部分があってもしょうがないかと思う。

*3:というか、用語集にしろ漫画版にしろ、よく読んだらアニメ本編との設定ズレっぽいものがあるのでそのあたりの設定チェックをちゃんとしてないんじゃないかなぁ、と思う。むしろ、あえてチェックを緩くして視聴者が解釈を広げられる様にしているのかもしれない。心で見て、考えるアニメだし。