ペニンシュラ型

~私とあなたの不可避な壁~

願いはたったひとつ。どこまでも追いかけるよ――劇場版天元突破グレンラガン紅蓮篇ネタバレ感想

 
こちらは、主に映画及びTV版を鑑賞済みの方、もしくはネタバレしても構わないという方のための感想記事です。映画の内容に深く言及していますので、興味のある方は続きを読むからどうぞ。超長文なので注意してください。
なお、ネタバレなし感想もアップしてありますので、内容をまだ知りたくない、という方はこちらをどうぞ。
それは、まだ自分の運命に気づかぬ一人の男の物語。 劇場版天元突破グレンラガン紅蓮篇感想
 
 
 
 
とりあえず、記憶を頼りにどういった内容だったか短い感想を交えながら書いていきたいと思います。TV版を見てる方はあらすじを大体分かってるハズなので、変更が特になかったところにはあんまり触れてません。あとDVD版はまだ未見なのでDVDで追加されてたシーンを自分は知りませんので、その辺ご勘弁いただけると嬉しいです。
 
次から、紅蓮編の内容に入ります。
 
さて、しょっぱなからガイナは本気マックスで来ましたね。
角川とかアニプレックスとか企業ロゴが出てくる中で、ガイナックスのロゴはなんと、TV版のあのサブタイトル表示の様に手書き風。
もうしょっぱなからこっちはニヤニヤマックスですよ。
 
いつものように菅生隆之さんのナレーションから始まるかと思いきや、アンチスパイラルこと、上川隆也さんのナレーションで始まったよ!!びっくりしたよ!!いきなり新作カットだよ!!
で、映ってる内容も例のアバンシモンじゃなくて、何とロージェノムが螺旋の戦士だった頃の話っぽかったですよ。途中からナレーターもロージェノム役の池田さんに変わってるし……
で、一話のアバンをかなり意識した絵コンテで画面が動き、映し出されるロージェノムの超古代の大戦艦。
最初から見てるこっちもテンションマックスですよ!!
どうして螺旋王が千年の倦怠に至ったかを短くまとめてあったんだけど、あれだけで一本新作アニメつくれるんじゃないか?ロージェノムの絶望がよく分かります。切ない。
 
あと、超古代ガンメン部隊のシルエットとかも出てたけど、どーみてもゲッターぽいのとかマジンガーっぽいのとかいたけどいいのかね。自重しろ、今石監督。いいや、もっとやれ。
 
で、ここから一話の『毎日毎日〜』のシモンのモノローグから本編が始まる。
総集編といっても、話の展開が速い割に、ちゃんとカミナの名乗り口上とか最低限抑えるべきトコは抑えてる。地上から出てきて、空をぐるぐる回るカットがそのまま短縮されずに使われてたのが良かったです。
アニキの声がTV版よりちょっと若くなった気がしましたけど、特に違和感なし。口上カッコイイし。
二話の前半くらいまで話を進めて、初のアイキャッチ。まさか劇場版で見られると思わなかった。
あ、あとちょっぴり残念だったのが、カミナがシモンに次は月に行くぞっていう台詞がカットされてたとこ。TV版で実際にシモンが月に言っちゃった時に、カミナのことを思い出す描写がなかったのがちょっぴり残念だったので、螺厳篇での補完に期待してたのですが、その辺まるまるカットか……
 
さて、カミナがグレンを奪おうとするテレビ二話当たりのお話。スピーディーな展開で、ドクロは出てきますが、なんとそれがカミナの親父さんことジョーさんだ、というお話が丸々カット。
このあたりで、あぁ今回の総集編は、シモンの成長、カミナとの絆がメインなんだな、そこにスポットを絞って、それ以外の要素を削って時間を合わせるのかな、とかなんとか思いました。
グレンを獲得して、また一区切りのアイキャッチ。グレン改造中のイラストでした。うん、こういう形の話のヤマがたくさんある総集編の形だと、アイキャッチで細かい区切りをつけるのは頭を切り替えやすくていいですね。
 
で、ヴィラル初登場、グレンラガン初合体の三話分のパート。
相変わらずアニキの剣なげぇな、抜け切らないんじゃないか、と思うよね、あの長さ。このあたり、新作カットがさりげなく多かった。話の流れをスマートにするための改編なんだと思うけど、挿入の仕方が上手いからなかなか気付けない。
エンキというかヴィラルに関しても新作カット追加もありで妙に活躍してました。ここまでが総集編ならではのスピーディーな展開だったのが、エンキにやられるパートをいやに長い時間(TV版とおなじくらい)で取ってるから、
「うわっヴィラル強ぇえええ!!!」
って感じになります。後半にヴィラルの負け犬度が更にアップするようなシーンが追加されてたんだけど、この辺りの、ヴィラルをものすごい強く見せる描写はその高低のギャップを活かすためかしらね。
グレン団の旅立ちでこのパートは終了。
 
あれ、アイキャッチとともに流れる『ファイザパウワァ』が終わらない!?
アイキャッチからそのままファイザパウワァこと『ラップは漢の魂だ! 己を信じて天を指差す怒涛の男・カミナ様のテーマを耳の穴かっぽじってよ〜く聴きやがれ!!』(相変わらず長い曲名だな……)がそのまま流れ出し、4〜6話分がなんとダイジェスト形式で紹介される。
いやまぁ私は嫌いじゃないけど、色々あった4話の処理をどうするのかな、とは思ってたけど、まさかダイジェストで来るとは……
もちろん4話分の絵も書き直しなしで、小林絵で黒の兄弟は自己紹介します。
ほぼこのあたりは新キャラ紹介がメインみたいな形。アダイ村のくじびきがどうのなんて触れられもしない。でも村長さんとデタラメ経典がちょっとは登場してたからまぁ良しとしよう。
ここはダイジェスト式で台詞も特にないので、新カットが入れやすかったらしく、みんながごはん食べてるところとか、ヨーコが眼鏡かけて勉強してるとこ(ヨマコ先生の伏線ですな)とかの追加や、はたまた地味に初代OPのカットを混ぜ込むなどして、面白い編集になっておりました。
 
次のパートは、螺旋王とその四天王達の登場から。螺旋王は結構書き直されてました。やたらと螺旋力解放の証のグルグル目玉を強調してるような印象を受けました。
そして、ここから一気に七、八話分の話をぶっ続けでやっていいます。
パンフ見るまで気付きませんでしたが、なんと八話がほとんどまるまる入ってます。今石監督も八話を残すこと前提で他を削っていったそうで。カットされてたのは出撃前の「グレン団も大所帯になったわねぇ」みたいな会話くらいかな?
 
で、七話に当たる部分ではキングキタン等の登場の仕方がちょっと変更に。あと特に苦労することもなくダイガンザンのブリッジまで登ってたな、そういえば。そのままの勢いで、『それはおまえがやるんだよっ!!』の台詞から八話分に。
出撃前の飲み会?シーンとかちょっと変わってたような気がする。
当然、十倍返しも、「岩が拳」、「図ったさ、俺達の運と男気をなぁっ!!!」の台詞もあったんで満足。あと、ヴィラルがものすっごく扱いが軽い。笑
しかし、何度見ても、アニキのゲンコツは痛そうだな……
で、序盤最大のヤマ場、怒涛合体!!地味にチミルフの技が増えてて笑う。というか四天王みんな技増えてた。技名までちゃんと叫ぶ。
そして、アニキ死亡……
劇場内の観客のみなさんも静まり返る。
シモンの「その日、俺たちはかけがえの〜」のモノローグのあと、静かにアイキャッチ
あのアイキャッチ(一人暗闇に立ち尽くすシモン)は哀しい……
 
ここまでで、なんとだいたい一時間ちょっと。時計を見て時間の経つ遅さにビックリ。普通、つまらない時に体感時間が遅くなるはずなのに、どうやら、体感時間よりも話のテンポが速すぎたようです。
 
こっから多分アイキャッチはなかったような気がします。でも、勢いを止めることなく話を進められていたので、あれで正解でしょう。
 
九話と十話前半分のお話が進みます。が、申し訳ないんですが、この辺のお話を私がしっかりと見返してなかったのでどこが変わってるかよくわかんなかったです。
ただカミナ亡き後の大グレン団がどうしてるのかっていう描写は結構あっさりなものに変わってたと思います。ダイガンザンが動かなくなってるってのも物凄くさりげなく台詞で言われる程度。
あと色々カットされてるのに、なぜかアディーネがヴィラルを殴りまくるシーンは残ってました。見てる時はわかりませんでしたが、パンフ見て残した理由に納得。そのあたりは後述します。それと、ここでアディーネが気になる一言をヴィラルに話しますが、それはあとでわかります。
映画館の大きなスクリーンで見ていると、カミナ死後の暗い場面から、ニアがでてくると白い、明るいキラキラした感じに画面が変わると、かなり救われた気分になりました。
変更点はというと、TV版より派手にグレンラガンが吐いてた気がします……
あと、なんかニアの顔も結構書き直してるっぽかったですが、あれはDVD版の修正かな?
 
そしてTV版十話に相当する部分(キタンの尋問という名のニアの質問攻め、カミナの石像作ってるシモンとニアの会話など)から、この映画ラストまではなんと同じ一日の出来事。
それもそのはずっ!!!
 
なんとここから、
 

全てッ!!脚本書き下ろしッ!!
もちろん、カットも9割以上がッ!!新カット!!!
 
TV版ではアディーネが一度ダイグレンに攻めてきた時のやりとりでニアが螺旋王の娘だとわかるのですが、劇場版では自分でみんなに螺旋王の第一王女って名乗るんですよね。
それに合わせて、アディーネは撤退せずに、最初の登場の時にデータ通信か何かでニアが捨てられたことを知ってそのまま彼女を捕まえるという流れに変更されてました。
 
で、なんと、残りの四天王全員が要塞引き連れて登場!!
ここで、観客は「中島かずきめッ、脚本まるきり書きかえおった!!」ということに気付きます。
劇場内の空気もガラリと変わりましたよ。こんな風に話を変えられたら、TV版の映像じゃやっていけないのはわかりきってるんですから。
私も画面にクギづけ。
 
そんな中、ヴィラルもダイガン(軍艦)を螺旋王に賜って出撃してくる。なんだよ、ダイガンザンドゥって。何だそのネーミング、エンキをつけずにドゥをつけるんかいな。ダイガンザンが白くなって、エンキラッガー付いて腕四本になってるのよ。ここは笑うしかない。
 
当然、ただでさえグレンラガンが動かせない状態でダイガン四体に空から陸から攻められ、大グレン団もピンチになります。
ニアはシトマンドラに空中に連れ去られ、アディーネはダイガンザンを奪還しようと、ガンメンを降り、大グレン内で白兵戦を仕掛ける。
 
白兵戦ですよ、白兵戦。さて、ここでみなさん、ガイナックスの公式HPを開いてください。今週(9/6〜9/12)のトップ画像は何ですか?
そうです。このトップ絵は本編の内容を表してたんです。なんと、ヨーコとアディーネが直接戦うんです。
パンフに載ってましたが、この女の戦いの目的は、互いに自分の男(カミナ、チミルフ)の船を守ることなんですよね。逝ってしまった自分のかけがえのない人のための戦い。なぜ、前述のアディーネがヴィラルを殴るシーンをカットしなかったか理解することができました。
 
反乱分子へのみせしめのために各地に中継映像を送りながらニアを殺そうとする空中のシトマンドラ。
もうだめか、と思われたその時、なんとシモンがシトマンドラのガンメン、シュザックにドリルでしがみついていた!!
コアドリルでシュザックの体をなんとかよじ登り、ニアを助けようとするシモン。その姿を見たヨーコはカミナとの例のやりとりを思い出す。
このあたりは全く話の流れが違うのに関わらず、TV11話の重要なポイントを巧く使えていました。この辺はもう言葉にできないくらい興奮しました。
 
シモンの鼓動と同調するコアドリル、
「おまえが信じる、おまえを信じろ!」ととうとう復活したシモン!!
しかし、シモンはシュザックから振り落とされしまう……
地上に落ちていくシモン、しかしその表情に恐怖の色はない。
その時、シモンの鼓動に反応してラガンが飛んできた。
ラガンに乗り込んだシモンはそのまま上昇し、シトマンドラからニアを救い出す。
ここの「助けにきたよ、ニア!!」のシーン、背景を空中に変えて、効果を入れることで、そのままテレビ版の絵コンテを使っています。このさかさまのシモンにニアが飛び移るという構図が私は気に入っていたので、変更がなくて嬉しかったです。大事なところはしっかり押さえてあるのが本当に素晴らしい。
 
その頃、カミナが死んだことを知らないヴィラルに追いつめられるロシウのグレン。
ここで挿入歌「happily ever after」が演奏開始。
グレンラガンに合体し、その際一気に翼もとりこみ、そのまま空へ。そして、
 
「アニキは死んだ、もういない!だけど、俺の背中に、この胸に、一つになって生き続ける!!俺を誰だと思っている、俺は俺だっ!!穴掘りシモンだ!!」
 
そのまま、シュザックをグレンブーメランで捕らえ、ギガドリルブレイクで破る。
 
いやもうね、言うことないよ、素晴らしいよ。もとからあんだけ良かったいいシーンをこう昇華されちゃぁどうしようもないよ。確かにシモンが復活するときに穴掘らなくなったのはちょっと残念だけど、ドリルを使うことが穴掘りだと拡大解釈すればそれはそれでOKだし、口上とか新カットで細かく綺麗に動いてるし、ゴーグルかけてからのアニキ回想長くなってるし、素晴らしいよ。私の文字なんかじゃ伝わらないから、未見の人は見に行ってください、そうしてください。
 
シトマンドラを倒したことで勢いづく大グレン団、黒の四兄弟は協力してグアームを倒す。脚本変わっちゃったから、得意の計略もできず、ニアとの会話もシトマンドラにとられ、(イヌカレー制作のニア回想はちゃんとあります。)あげく、グレンラガンとも戦わないとかグアーム哀れ……
ヨーコはポニーテールの中に隠していた拳銃でどうにかアディーネを退ける。
急展開過ぎて、ソードマスターヤマトを思い出したのは秘密だ。
 
助かった、と思いきや、ヴィラルとアディーネがなんと四天王のダイガン(ダイガンザンはダイガイザンドゥで代用)が合体。ドテンカイザンになって大グレン団に襲いかかる。しかし、ここの名乗り台詞、アディーネは生きてるのに何故か四天王でもなんでもないヴィラルが喋る。「四天王専用の〜」とかの台詞なのに……
なんというかませ臭……
でもこの合体、古き良きロボットアニメの合体というか接合部分から七色の光が出たり、無駄に凝ってたりで使い捨てるには惜しいクオリティ。
 
やられたかと思いきや、大グレン団、炎の中で燃えているッ!!
ここで大グレン団一人一人が名乗りをあげる。ちなみに神永レオさんの今回のお仕事はここくらいです。
大グレン団全員が名乗りを上げたところで、そう、TV版最終回よろしく、全員での
「俺達を誰だと思ってやがる!!」
そして、グレンラガンを中心に大グレン団みんなでのギガドリルブレイク大グレン団スペシャルでドテンカイザンを破る。
 
中継でそれを見ている人々は歓喜の声を挙げる。その中には幼いころのギンブレーの姿もあった。
 
そして、一人だけ生き残ってしまったヴィラルは後悔しカミナではなくシモンを敵と認識し、四天王の仇討を誓う……
一方、アニキの墓の前でそれぞれの決意を胸にするシモンとニア。
しかし、彼らの戦いはまだ続く。
 
ここでエンディング。真っ暗やみの中一人シモンが歩いて行く、初代エンディングを意識した作り。『続く世界』初めて聞いたけど、いい感じ。
 
そして、不敵に笑う螺旋王、ラゼンガンのカットで『つづく』
 
 
 
なんだ、これ。書いてたらますますもう一回見たくなってきたぞ。
とても密度の濃い二時間でした。
クライマックスの全員での名乗りと言い、螺厳篇への期待も嫌が上にも高まります。
だって、螺巌篇は、螺旋王との戦いから始まるんですよ、もはや、話のピークが見えない。
そして、やっぱり、今回の目玉はラスト約二十分の新解釈。
あれこそ、疾風怒濤、あれこそ、グレンラガン。素晴らしいの一言に尽きる。
 
素晴らしい作品に出会えてよかった。