ペニンシュラ型

~私とあなたの不可避な壁~

触れれば壊れる モリエサトシ『白磁』感想


なにこれちょおえろい。(まじで
花ゆめの許容範囲を突破している気がする。
でも、それ以上に面白い。
私が個人的にイチオシしている双子の作家さんの一人モリエサトシ先生の新作。(ちなみにもう一人の高木しげよし先生の新作も来月出るらしい)
モリエ先生は最初の設定(作品に出さないところまで含め)をしっかり決めてから話を転がすことが凄く上手な作家さんだと私は思っていて、花ゆめによくある設定先行型の作品作りの中でも他とは違う異彩を放ってらっしゃる。*1
更にその中に地味な黒さを入れてきたりしてもう素敵よ素敵。


そんな設定の妙と作品の方向性が見事に化学反応をおこしたのが今作。
いちばん根本の設定はありがちといえばありがちなんだけど、そこに付け足してある要素が独特。
主人公の明春は画家。少女マンガに出てくる画家で主人公とくりゃ当然のごとく今をときめく若手の天才でありんすよ。イケメンで、純真というか子供っぽい。
そんな彼が白磁の焼き物のような白い肌をもつ女子高生、生花にひとめぼれ。明春は友人になかばむりやり背中を押され、彼女に絵のモデルを頼むことに。
だが、明春は対象に実際に触れてみないとイメージが湧かず、絵を描くことが出来なかった。
あとは、ごらんのありさまだよ!!(何を見ろと)


この作品の独特なところが主人公の視点というか価値観。
さっきも書いたけれど、明春は純真で子供っぽいところを持っている、それこそ少女マンガの男キャラクターといった感じのイノセンスな性格。
だからこそ、逆に、相手に触れてしまいたい、この衝動をぶつけたい、という気持ちを自覚している。
一見、無垢なキャラクターが自分のエゴイスティックなところだとか汚いところを必要以上に自覚して諫めようとする。
このあたりの近づきたいけど近づけないという感覚を表現されるのがとっても上手い。


普通これだけだと、話が袋小路にはいってしまってなかなか進展を見せないのだろうけど、ものすごくあっけなく主人公とヒロインが両想いになってしまうし、かつ、ヒロインの生花の方が、明春のことを受け止められることができて自分の気持ちに正直だから、じれったく思うこともなく読み進めることができると思う。
そのおかげで、ハリネズミのジレンマよろしくなかなか近づくことができない明春を生花が受け入れてあげるという構図に軸が絞られていて、ブレがなく話に集中できる。(だからよく考えると主要登場人物の少なさが凄い。)
ただ、このやりかただと長くは続けられないだろうなぁ、残念だなぁとか思ってたらこの巻ラストで急展開ですよ。
びっくり。はやくも次巻が非常に楽しみなのですが。
イチオシ。ひさしぶりに→にアフィ新しく貼ることにする。


巻末にはこれまた設定が凝ってる読切の『少女カンセン律』を収録。
他にも読切はいっぱい描かれてるはずなので、短編集とかで出してくれないかしら。


さてさて、この『白磁』元々、別冊付録のフェチ特集で一話が描かれたらしく、冒頭にも書いたとおりものすごくエロスい。直接描写はないはずなのに!!エロティクスエフに載ってても違和感ないかも。
それとモリエ先生は眼に感情を載せるのがすごく上手くて、たとえば笑ってるけど心の中では違うことを考えている表情とかを描くときに目の表現が凄く上手い。それなのに、シーンによっては敢えて眼を描かなかったりする。この使い方が各場面の雰囲気をすごく良くしていると思う。
なんだ、ストーリーがなくてもいいからひたすら二人がいちゃいちゃしている話が読みたい。
すごいおすすめる。


白磁 第1巻 (花とゆめCOMICS)

白磁 第1巻 (花とゆめCOMICS)

 

*1:なんか日本語がおかしい気がする